私がその衝撃的なポスターをはじめて目にしたのは9/25だった。
郊外の自宅からローマ市内に向けて車でカッシア通りを走っている時、
前方にいきなり強烈な写真が現れた。
遠目からはCGでつくったオカルト映画の宣伝かに思えたのだが、
ポスターに近づくにつれて、
大きく「NO 拒食症」と書かれた文字が目に飛び込んできた。
そして、そこにはまったく修正などしていない、
枯れ葉のようにやせ細った全裸の女性が写っていたのだ。
被写体はここ数年、深刻な拒食症に悩んでいるフランス人モデル、
イザベル・カロ(Isabelle Caro)。現在の体重は30kgちょっとだそうだ。
撮影をしたのはオリヴィエロ・トスカーニ(Oliviero Toscani)。
1942年生まれのイタリアでもっとも著名なカメラマンのひとりだ。
1982年から2000年まで、社会的テーマを取り上げたインパクトの強い
ベネトンのPRポスターは、記憶に新しい。
"エリザベスジェット頭痛"
今回の衝撃的なポスターは、パドヴァが本社の「Nolita」という
ファクトリーブランドがトスカーニに依頼したキャンペーン・ポスターで、
ミラノコレクション期間の1週間のみ、イタリア主要都市の広告スペースに
貼り出されたものだ。
それこそ、ミラノには世界中からファンションジャーナリストや、
バイヤー、VIPたちが、集まってきている重要な時期である。
あまりに衝撃的なポスターだったので、
各メディアや公共機関を巻き込み、物議を醸し出した。
ミラノ市長レティツィア・モラッティの指示により
「Nolita」のポスターは市が保有するポスタースペースから
は閉め出しを食らった。市長は、
「我々の判断と行動は今でも正しいと思っている。
拒食症が社会問題になっているとはいえ、
人前に出していいことと、いけないことがある。
社会問題をテーマにした革新的なPRと言っているが、
それを商品宣伝に結びつけたとんでもない行為」と、コメントしている。
Tシャツ痛みバーテンダーの歌詞
それに対し、Nolitaの社長 ルイザ・ベルトンチェッロは
「革新的であるはずのミラノ市のリアクションには正直言って驚いた。
リヴィア・トゥルコ厚生大臣は今回のキャンペーンに賛同してくれたのに。
拒食症は深刻な社会問題。
反論は覚悟していたが、それでも人々の関心を、
しかもミラノコレクションの期間に集めることは必要だと判断した。
まさかミラノ市が反対に回るとは思っていなかったが」と、伝えている。
トスカーニ自身は、
「潜在意識の中では拒食症への恐怖を感じているくせに、
ミラノは真実を見ようとしない。ミラノはいずれ滅びると思う。
きっとエレガントにね。
拒食症に悩みながら、でもエレガントに滅びていく。
彼らにとっては景観(美しいこと)が第一なんだから」と、
皮肉なコメントを出している。
ベッド太り過ぎの女性のベッドには、自尊心を注ぐ
「Nolita」はここ数年、ダイレクトな広告ポスターではなく、
不意打ちをつくようなインパクトのある広告戦略を行っている。
挑発的で、強烈なインパクトを与え、
メッセージ性の強い写真を撮ることでは
トスカーニをおいて適任はいないと、判断したベルトンチェッロ。
今回の写真が上がってきた時には同じ女性として、
さすがに目を背けたという。
「胃に一発くらったような衝撃を受けましたね。
でも、スキャンダルになってけっこう。
このくらいインパクトがなければメッセージは伝わらない」と、
自分自身に言い聞かせて、今回のキャンペーンに踏み切ったと、
ベルトンチェッロは語っている。
ショービジネスの世界を目指し、
体のラインを気にする若い女の子たちが絶えないイタリア。
ミラノコレクションでは、サイズ38 (日本の7号程度)
以下のモデルは使わないよう呼びかけていると言う。
とは言いながらも、
今年のMiss Italiaを獲得したシルヴィア・バッティスティ(18才)は
身長180cmにもかかわらず、サイズが38だとか。
Miss Italiaで審査員が
Miss エレガンスに対して肉付きが良すぎるとコメントし、
物議を醸し出したが、「NO拒食症」といくら叫び続けても
「スリム至上主義」の商業世界が変わらない限り、
拒食症に苦しむ女の子たちは後を絶えないのではと思う。
Nolita のホームページはこちら
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